高瀬理恵:公家侍秘録1

 貧乏公卿に仕える公家侍が色んな事件を解決していく…というような構成の話。ついでに言うと、この侍は日野西家に伝わる名刀粟田口久国の守役でもあった。公家も宝を守るためにそういう役職が必要だった…のかな。緊張感の無い日野西家の娘の薫子と親父殿がからんでけっこうドタバタ劇になりがちで良かったと思う。下級公家の貧乏っぷりが哀れを誘います。内職をして糊口をしのぐぐらいの貧乏っぷり。あとは、公卿たちと京都駐在の武士たちの微妙な関係が興味深い。
 ついでだからこの漫画に出てくる用語についていろいろ調べてみた。
(なんか守役っていう存在が実在したかどうかぐぐったけど確認出来ませんでした)「花守り」については辞典に

<(桜の)花を守る人。花の番人。[季]春。


とあるから、色んな守役が実在したのは確かかもしれませんが。「道具守り」については確認出来ず。
粟田口久国という刀鍛冶は実在した人みたい。多分この刀のモデルは粟田口吉光かもしれない。そういえば後鳥羽上皇って刀好きだったっけ…。政治的にはあまり評価が高くないな…って関係ないか。
 日野西家についてぐぐってみたら、なんと実在する家でした。しかも維新後子爵になっとる…。

日野西家(ひのにしけ)は、名家の家格を有する公家。藤原北家日野流、広橋家支流。家紋は鶴丸。江戸時代の家禄は、200石。明治維新後、子爵。

 
 
 日野家(この家は室町時代に将軍の妻となった人物がいるし割りと有名ですね)から広橋家が分かれてさらにそれから日野西家が分かれたってわけですね。元をたどると藤原北家真夏流らしい。作中では近衛家の門流とか書かれてるけど、Wikipediaとの記述は微妙に違う。まあどうでもいいことだが。
 御付武士は禁裏警護の役割があったが、影で幕府のために御付同心を使って朝廷を探る役割を担っていた…ってつまりスパイか。この御付同心てのが根来衆使ってたりとか忍者ぽくてなかなか面白い存在だ。
 土佐派とは、朝廷御用達の画家の流派であるらしい。
 古筆の話に出てくる閑院流の小倉家は実在した家。だが、高倉家が小倉家の分家であったかどうかは疑問である。

 小倉家(おぐらけ)は、羽林家の家格を有する公家。藤原北家閑院流西園寺家一門の洞院家庶流。家業は神楽。家紋は右三つ巴。江戸時代の家禄は150石。明治維新後、子爵。

 何しろ、

 高倉家(たかくらけ)は藤原北家である藤原長良の子孫である藤原範賢の子高倉永季(ながすえ)(従二位・参議)(1338年 - 1392年)を祖とする半家の家格を持つ堂上家


 こう書いてあるし。

 しかし、維新後は下級公家でもみんな子爵にはなれたのかねえ。うーん、半家なんて家格があることも知らなかったぜ。
 多分老中水野忠邦の名前が出てくるので、この漫画の時代の天皇仁孝天皇であろう。
 六話に出てくる千種有功が渋いです。
 今更ながらこの作者が女性だってことに気付いてビックリした。