フレデリック・フォーサイス(篠原慎訳):マンハッタンの怪人(角川書店)

今日も暑いです。というのはどうでもいいのですが。
食わず嫌いはいけません。
もしかして損をしているかもしれない。
この作品も、元ネタが今までのフォーサイスとかけはなれていたので今まで忌避していた。
最近図書館行ってみたらまだあったので借りて読んでみた。アフガンの男のついでに。読んでみると、さすがフォーサイスである。20世紀初めのアメリカの雰囲気が良く出ている。あと、神父とピエール少年のラテン語を教えるときの会話が良かった。
顔が損なわれた男の話とか大好きです。もっともちょびっとホラーっぽい雰囲気はあるものの、基本的には悲恋の話として構成されている。もっとも、ピエール少年が父親としてファントムを選ぶのは唐突な感じが否めなかった。怪人を選ぶ理由がさっぱり不明なのだ。

フォーサイスはルルーの紹介もしている。かなり売れっ子のジャーナリストであったらしい。ただ、記事を面白おかしくタイプのジャーナリストであって、真実を追い求めるとかそういうタイプのジャーナリストではなかったようだ。小説もバンバン書いたが、名前が残ったのはオペラ座の怪人だけ…。ルルーの小説については

ルルーの原作を今日の目で見ると、正直に言って、途方に暮れてしまう。

と、手厳しい。
そもそもフィクションが混ざっているのに「これはすべて真実である」と言い切ってしまうのだから…。フィクションと架空の事を混ぜるファクションという小説技法についても紹介している。これは、真実の中に小さなを嘘をちりばめる感じがした。
オペラ座の怪人は、何度も映画化されたりすることによって掘り起こされたのでいまだに名前が残っているのだ。
 作中に出てくる「ダリウス」というのは原作のペルシャ人へのオマージュなのであろうか。