女教皇ヨハンナ(下)

 9世紀ごろにいたという伝説がある女教皇を元にしたフィクション。これはその下巻。というか、上のときに私与太話とか書いちゃったんですけど、訳者あとがきを読んで実はかなり実在した可能性が高いことを知った。不勉強であった。
 読みやすくて面白くてすぐ読み終えることができた。すごい売れた小説らしいです。ゲロルトとの恋愛と教皇庁での闘いを軸にして話は進んで行く。そしてアナスタシウスは結局教皇になれず、記録の改ざんをするのは彼ということに作中ではなっている。最後にあの人が出てくるとは思わなかった。
 この本を読んで、当時の教皇選挙は後世とはずいぶん違うものだったのだなと知る。そのあげくローマの平民にもいまだに選出する権利があったとは…。古代ローマの伝統の名残か。しかし、教皇庁の組織は大分出来上がっていたようだ。それどころか腐敗したところも見受けられる。(コスマスを役職に取り上げてもらうくだりなど)
 冷徹なアルセニウスにもちょっと人間臭いところがあるなど作者の書き方には気配りがあると思う。

・サラセン人のこと
 やっぱり来襲してきてたようだ。当時のローマは北にドイツ、東にビザンティン、北アフリカイスラム勢力に挟まれていたのでかなり戦略的に苦しいところがあったのではないだろうか。