ケン・フォレット:大聖堂

 最初、この本を私は原書で読んでた。ところが修道院内部の描写とかストーリーとかあまりにも面白いので、続きが気になって日本語版を買ってしまった。(上巻だけは原書で読んでた)
 一言で言ってしまうと、勧善懲悪で王道なお話。そこには虐げられる者と虐げる者がいて、強者が弱者をいじめるのだが、弱者は知恵を振り絞ってその障害を克服していき、最終的には勝ってしまう。
 歴史好きとしては、市を開くことや、英国の内戦を背景としており、そこらへんがうれしいポイント。登場人物の美点や欠点をえぐりだす細かい心情描写はさすが。正義側に属するフィリップにすら欠点はあるが、それがまた彼の魅力を引き立てている。結局、完全な人間なんていやしないのだ。ロクデナシかと思われたリチャードが軍事には強いあたり、なかなかいい味を出している。ウォールランやリミジアスですら、最後には改悛している。ウィリアムはどうしようもねえ。
 日本語訳だと千ページ以上になるが、面白いのであっという間に読める。