マーガレット・パウエル(村上リコ訳):英国メイドマーガレットの回想

 本屋で見かけたのでつい買ってしまった。別に表紙の森薫の絵に惹かれたわけでもない。
 20世紀ごろキッチン・メイドになったマーガレット・パウエルの回想記。この人、扱いの悪い中流家庭に勤めたことが多いせいか不平たらたらです。唯一貴族の家に勤めたときは「素晴らしい環境だった」みたいなことを言っているが。なんだか美化しがちだけど、やっぱり支配する側と支配される側の関係って断絶があって越えられない壁があったんだろう。階上と階下じゃ食べるものも違うとぶーぶーだ。これを現代のサラリーマン社会に置き換えて考えてみると、なんだか差は見えにくい。もしかして会社で同じものを食べているかもしれない。そりゃ待遇は上のほうにいくと違うかもしれないけれど、民間なら上に上がればその待遇に預かれるチャンスもある。使用人の世界みたいな断絶された壁みたいなのは感じにくい。読んでいて思ったのはこの人ほんとに自分の記憶だけで書いてるってこと。「今は知らない」とかそんなふうに放り投げて書いてることがある。裏づけ調査とかしてないのね。総じて読みやすくて面白いのであっというまに読めます。ずっと悪い環境で仕えたせいか、使用人の世界についてはどちらかというと否定的。ホントにキッチンメイドも重労働だったのだなーと思う。
 え、主人側と使用人側の性的な関係? この本を読む限り、それはあったみたい。決して公に出来ないスキャンダルとして語られるだけで終わるタブーなものだったようだけど…。
 余談だが、MAID HACKSなどで引用されたエピソードが出てきて思わずにやりとしてしまった。(例えばナニ−とコックは仲が悪い…と育てるのに失敗したコックのエピソード)